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2021年02月28日

心揺さぶられる同点劇

 サンフレッチェ広島1-1ベガルタ仙台。
 2021年シーズン開幕戦、ベガルタは島尾摩天を退場で失い、直後に先制を許し、60分以上を10人で戦う苦しい試合展開。スゥオビィクの再三の神守備を含め丹念に守り、終了間際に血だらけで奮戦した大老関口訓充の抑揚がよく利いたドリブルシュートのこぼれを、直前に起用された赤崎秀平が決め、敵地で貴重な勝ち点1獲得に成功した。
 幸運に恵まれたのは間違いない、また各選手の気迫もすばらしかった。しかし、この苦しい展開の中、同点に追いつけたのは、人数が少ない展開で合理的な作戦を選択し、各選手が工夫と知性の限りを尽くして戦ったからだ。運や精神力でこの試合を語るべきではない。

 序盤、敵地での試合ゆえ、後方に重心を置いて試合に入る。サンフレッチェは相変わらずボールを奪われてからの切り替えが早く、中々抜け出せない。それでも、上原力也と関口訓充の上下関係から次第に両翼から攻め込みの時間帯も増えていく。特に左サイドに起用された秋山陽介と氣田亮平が意欲的で、幾度かおもしろい場面を作りかける。ただ、トップの皆川佑介が広島CBの荒木隼人と佐々木翔の厳しいマークに沈黙。前線で起点を作れないことあり、川辺駿の落ち着いた読みと持ち出しから速攻を幾度か許すイヤな展開。28分の島尾の退場時も類似の流れからだった。ジュニオール・サントスの鋭い技巧からアピアタウィア久が抜かれ、完全に裏を突かれかけたところで、島尾らしい決断力あふれるスライディングを試みたがボールに触り切れず、一発退場となってしまった。
 手倉森監督は、中盤の吉野恭平を最終ラインに下げ、トップ下の関口をボランチに下げる修正で前半を乗り切ろうとした。しかし、33分青山敏弘の好技から、J・サントスが見事なターン、上原が振り切られ、カバーしていた吉野が詰めを躊躇した瞬間、思い切りのよいシュートを打たれ、吉野に当たったボールは、スゥオビィク懸命のセーブも届かないところに飛んでしまった。少しでも長い時間0-0で試合を進めたいベガルタにとっては痛い失点となった。

 後半頭から、松下佳貴を氣田に代えて投入。関口を左サイドに回す。1人足りない状況でリードされている以上は、まずこれ以上点差を広げられないことが重要。突破力ある選手に代えて展開力あるタレント入れる手倉森氏の意図は、よく理解できた。
 1人少ないためブロックを固めれば、それなりに守れる。しかし、ボールキープして敵陣に持ち出すと、前半同様最前線の皆川が持ちこたえることができず、逆に青山と川辺の展開から速攻を許し幾度も危ない場面を作られた。それでもベガルタ各選手は素早い戻りで対抗、ジュニオール・サントスに突破を許しても、スウオビィクが神がかりのセーブを見せる。関口が出血し治療していた時間帯は9対11となり、さすがに危なかったが何とかしのぐ。
 62分、とうとう手倉森氏は皆川をあきらめ石原崇兆を起用し、マルティノスをトップに。この変更はうまくいった。両サイドの石原と関口は巧みにポジションを絞り中盤のボールキープをサポート。マルティノスは前後左右に動きながらとりあえず時間を作ることには成功した。その後も、手倉森氏は79分に秋山→真瀬拓海、87分に吉野→平岡康裕、マルティノス→赤崎とフレッシュな選手を次々に起用する。
 一方で、サンフレッチェ城福監督は選手交替は2枚のみ。これは、幾度も好機をつかみ、佐々木と荒木の2CBの激しい守備で決定機をほとんど許していなかったこともあったのだろうか。さらにサンフレッチェが終盤リードを守ろうとしたのか、重心を後方に置いたこともあり、終盤ベガルタのパス回しが機能する。
 同点劇直前は、平岡→石原→松下と鋭いパスがつながり、左タッチ沿いから中央を向き加速した関口に、松下らしい強さと方向が絶妙なパスが通る。トップの赤崎、右MFの真瀬の2人が右から左に流れ、関口のシュートスペースが空く。こぼれを赤崎が冷静に蹴り込んだ。
 苦しい状態が続く中、全選手が創意工夫と我慢を重ね、とうとう勝ち点1を確保したわけだ。誠にめでたい。

 もちろん、課題も多数見られた。

 皆川がサンフレッチェCBに完封され、ほとんどキープができなかったのは痛かった。このポジションには、同点弾を決めた赤崎と昨年のレンタルから保有権所有となった西村拓真がいるが、皆川が機能するかどうかで、攻撃の選択肢が大きく左右する。もちろん、1試合のプレイの出来で判断すべきではないし、50分過ぎに蜂須賀のクロスからの皆川のジャンプボレーにはワクワクしたのも確かだ。奮闘を期待したい。

 守備面では小さなミスが気になった。
 島尾の退場となった後方からのタックルは、いかにもこの選手らしい素早い決断によるものだったし、本人はボールに行ける自信があったのだろう。まあ、しかたないなと思う。むしろ問題は、その直前にアピアタウィアが、J・サントスのスピードの変化に出し抜かれたこと。ここは猛省してほしい。
 失点時の吉野にも不満。J・サントスが見事なターンでマークしていた上原を振り切った瞬間、もう一歩でも二歩でも寄せられなかったものか。
 86分のスゥオビィクの超美技。ベガルタ左サイドが崩され、柏が冷静にファーサイドに走り込んだ東にピタリとクロスを合わせた場面。左サイドでサンフレッチェが巧みなパス回しを見せたところで、右MFの真瀬は完全にボールウォッチャになってしまい、後方から進出する東に気がつかなかった。ここは一度でよいから首を振り、東の進出に気がついてほしかったのだが。
 もちろん、アピアタウィアも吉野も真瀬もすばらしいプレイを見せてくれたからの同点劇ではあった。ただ、上位進出を目指そうと言うからには、このような小さな判断ミスを極力最小にできるかどうかが重要なのだ。

 次節はホームにチャンピオンのフロンターレを迎える。相当難しい試合にはなるだろう。
 前半半ばの退場劇もあり、チームとしての完成度の評価が難しい。しかし、新加入の選手の多くが機能し、既存の選手たちも特長をよく発揮しての勝ち点1獲得は非常に大きい。
 次節もよい結果を期待したい。

2021年02月27日

Jリーグが開幕する、2021年

 Jリーグが開幕する。

 極めて難しいシーズンが始まる。
 J1は、20チーム総当たり、4チームの自動降格と言うレギュレーション、J2は22チーム、2チーム自動昇格、4チーム自動降格。
 昨シーズン開幕早々に疫病禍に襲われたJリーグ、降格なしと言うレギュレーションで何とかシーズンを終えることができた。その結果、今シーズンは格段に過酷なものとなってしまった。チーム数が多いのみならず、開催されるのかされないのか未だ不明な東京五倫、相当の変則日程で集中開催となるであろうACL、さらにはカタールワールドカップ予選が乱入してくる。加えて、各クラブは昨シーズン同様にきめ細かな疫病対策を余儀なくされる。
 過密日程を含め、過去にないスリルを含んだ楽しいリーグ戦になるのかもしれない。戦闘能力の争いに加え、過密日程と疫病対応と言った運不運と言うスパイス。

 さて、私のベガルタ。
 昨シーズン下位に低迷したこともあり、前評判は高いものではない。多くの評論家が顧客候補の一角とみなしているようだ。しかし、私はそれなりに楽観的だ。
 過去3シーズンをちょっと振り返ってみる。
 18年シーズンは、渡邉前監督がじっくりと作り込んだシステマチックなパス回しが奏功、上位進出が期待されたが終盤失速。それでも、天皇杯決勝進出、魅力的なサッカーを楽しむことができた。
 しかし19年シーズン序盤、中心選手の離脱もありチームは低迷。シーズン途中に守備的なシフトに切り替え残留を果たした。シーズン終了時に渡邉氏が「時計を後に戻してしまった」とコメントを残し退任。ただし私の印象は少々異なる。島尾摩天と言う強力な守備者を軸に、理詰めの長駆型逆襲を成功させられるようなチームになっていたからだ。
 J2で格段の実績を誇る木山氏を新監督に迎えた昨シーズン。シーズンを通してあれだけ負傷者が続出してしまってはどうしようもなかった。もちろん、負傷者続出そのものがクラブとしての実力なのだが。それでも、終盤中心選手が復調するや、それなりの戦いができるようになった。木山氏の丹念なチーム作りと、選手達の精神力の強さに感謝するものである。結果はつらいものだったけれど。

 そして、今シーズン前のオフ。疫病禍の影響もあり経営危機が伝えられ、多くの選手の放出を余儀なくされるのではないかと危惧された。実際、オフに入って早々、中核の長沢駿、椎橋慧也の離脱が報道された。しかし結果を見ればヤクブ・スゥオビイク、島尾、松下佳貴、蜂須賀孝治、イザック・クエンカと言った中心選手は残留。CKSAモスクワに所有権があった西村拓真の保有権再確保。さらにクエンテン・マルティノス、上原力也、秋山陽介、氣田亮真と言った相応の実績を積み上げたタレント補強に加え、アピアタウィア久、真瀬拓海、加藤千尋の大卒選手の獲得。
 さらに名将手倉森誠氏の監督復帰。氏の采配により、ベガルタがACL出場できたこと、リオ五輪予選を鮮やかに勝ち抜いたことは、記憶に新しい(もっともリオ五輪本大会では采配に凝り過ぎて墓穴を掘ったが、それはそれで手倉森氏らしいなと)。
 気がついてみれば、ここ数シーズンでは最強ではないかと思える体制が揃っているではないか。最前線やサイドバックの選手層に少々不安はあるが、そんな贅沢を言える立場でないのは皆がわかっている。佐々木新社長を軸とするフロントが、ここまで健闘してくれたことに敬意を表するものである。

 Jリーグが開幕する。

 ただ、世紀近くサッカーを堪能してきた老サポータにとって、疫病禍の影響と昨今の変化は少々飲み込みがたいものあるのは事実だ。
 疫病禍により、現地参戦しても声を出せないつらさを我慢する必要がある。水際ったプレイをした選手を絶叫で声援できないことが、かくもつらいものだとは思いもしなかった。この半世紀、私にとってサッカー参戦は絶叫とともにあったのだ。
 昨シーズンからの疫病禍対応もあり、過密日程のせめてもの緩和に交代可能人数が大幅に増えている。これはこれでなじみがたい。どんな鍛え抜かれた選手でも、90分と言う時間は大変な長丁場。そこに少数のフレッシュな選手が起用されることによる変化がサッカーの妙味だった。終盤、フィールドプレイヤの半分の顔ぶれが変わることが許されるレギュレーションは大きな違和感となっている。
 そしてVAR。FIFAが導入した愚策は枚挙に暇ないが、VARはその中でも最低のものだと思っている。映像を主審が見直すことで公平性が保てるわけがない。そんなに正確な判定をしたいならば、各選手に多数のセンサでもつけて、AIを駆使して、人為的な判定ミスを排除でもしてくれ。
 そうは言っても。サッカーはサッカーなのだ。サッカーがサッカーである以上、これほど楽しい娯楽はない。

 Jリーグが開幕する。

 繰り返すが、半世紀にわたりたっぷりとサッカーを楽しんできた。いつもいつも語っているが、こんなステキなリーグ戦を所有できるなんて、若い頃は夢にも思わなかった。故郷のクラブの七転八倒を毎週堪能できるなんて、若い頃は夢にも思わなかった。
 そして、今シーズン、冒頭で述べた通り、戦闘能力の争いに加え、過密日程と疫病対応と言った運不運と言うスパイス。今シーズンほど、サッカーをサッカーとして楽しめるシーズンは初めてかもしれない。

 とにかく。
 無事にリーグ戦が完了できますように…

2021年02月24日

名手たちとの別れ2021

 毎シーズンの常とは言え、愛するクラブを去る選手たちが何人もいる。新たなシーズンを迎える高揚感と共に、去った名手たちを思い起こすのも、シーズンオフの楽しみだ。

 関憲太郎は、ベガルタの歴史上忘れることのできないゴールキーパーだ。
 落ち着いたボールさばきと、距離は出ないが正確なフィード、見ていて安心できるゴールキーパーだった。たしかにキーパとしては小柄で、跳躍力に限界があったためかミドルシュートの処理には不満があった。けれども、よほど鍛錬を重ねたのだろう、高いボールへの判断は絶品で、敵の中途半端なクロスへの対応は実にしっかりしていた。
 明治大からベガルタに加入したのが2008年シーズン、あの磐田の夕暮れのシーズンだ。当時ベガルタには林卓人がいたこともあり、定位置奪取は難しく横浜FCにレンタルとなる。13年にベガルタに復帰、翌14年シーズンに林が移籍したこともあり定位置を獲得。以降、六反勇治、シュミット・ダニエルと言った新加入の選手と、激しく定位置争いを演じた。その激しい定位置争いの中、六反やシュミットは能力を向上させ日本代表候補に選出される。18年にはシュミットはとうとう代表に定着、アジアカップで公式戦にも出場、19年には欧州に旅立つこととなった。昨シーズンは、シュミットと入れ替わるように加入したヤクブ・スウォビイク、さらにユースから昇格した小畑裕馬と、さらに強力なライバルの登場で控えにはいることも少なくなり、ついにベガルタを去ることとなった。
 新たなクラブはレノファ山口、関が激しい定位置争いを演じた際のベガルタ監督渡邉氏が采配を振るクラブだ。関のさらなる活躍を期待したい。
 改めて、関の経歴を振り返り、林、六反、シュミット、スウォビイク、小畑と言った好ゴールキーパを所有できたのは、関がいたからではないかと思う。関がいたからこそ、こう言ったライバル達はその潜在能力を十分に伸ばすことができたのだ。ゴールを守ると言う直接的な貢献と合わせ、チームを支えたという意味では、ブランメル時代を含めたベガルタ仙台の歴史上最高のゴールキーパは関だったと思っている。
 ベガルタは、昨シーズン終了前に関とは再契約しない旨を発表した。ユアテックでの最終節、我々の前で挨拶してくれた関に対し、疫病禍下の我々は感謝の絶叫をすることができなかった。これは大きな悔いとなっている。

 サッカーどころ清水で生まれ育った192cmの大型ストライカ長沢駿は、エスパルスを皮切りに多くのクラブに所属し、30歳でベガルタにたどりついた。独特のボール扱いと、純粋な高さを活かしたこのストライカは、ガンバで点取り屋として確立した感があった。しかし、ベガルタで長沢はさらに成長してくれた。豊富な運動量での忠実な守備を行いながら、しっかりと点をとるスタイルが確立したのだ。
 最近のサッカーでは、最前線の選手を起点とした組織的守備がチームの命運を左右する。戦闘能力が低く、相手チームに主導権を奪われるチームにおいては、最前線の選手の負担は非常に大きなものとなる。
 特に昨シーズンのベガルタは負傷者が続出し、その傾向は強かった。そのような環境下で、長沢はリーグ終盤次々と点を決めてくれた。
 敵陣での献身的な守備と得点。前者に体力を費やしてしまうと、後者で力を発揮できない。前者をサボると、反対側のゴールネットを揺らされてしまい、後者で何をがんばってもむなしい結果しか残らない。昨シーズン終盤、長沢はそのバランスを完璧に演じてくれた。執拗な守備を行いながら、しっかりと得点を決めてくれたのだ。その絶妙なバランス。
 このまま、長沢はベガルタで献身と得点のバランスを極めてくれると期待していた。
 トリニータへの移籍と聞いて「やられた」と思った。ベガルタと同程度の経済規模のクラブならば、長沢は大エースだ。ベガルタよりも良好な経済的条件を提示されれば、そちらを選択するのは当然だろう。
 一方で、トリニータやベガルタよりも経済規模が大きなクラブからのオファーならば、長沢も迷ったと思う。32歳の長沢にとって、バックアッパーとしてのオファーは魅力的ではない。
 ではベガルタの長沢へのオファーが不適切だったのか。これは何とも言えない。スウォビイクと島尾摩天と松下佳貴とクエンカと蜂須賀孝治らへのサラリーとのバランスとなる。
 この2シーズンの長沢のすばらしいプレイに感謝したい。

 ベガルタの中盤を支えてきた椎橋慧也はレイソルに移籍する。
 他のクラブのサポーターからは笑われるかもしれないが、ベガルタと言うクラブは高卒で加入した選手が定位置を確保した事例は少ない。過去10年を振り返っても、椎橋と先般CKSAモスクワから復帰した西村拓真くらい。私たちにとって椎橋は、本当に貴重なタレントだったのだ。
 ただし、椎橋はここまで順調に成長したわけでもない。2018年シーズン、椎橋はアンカーとして3DFを基調にしていたチームの中心選手として、天皇杯決勝進出などに貢献した。ところが2019年シーズンは開幕直前に負傷したこともあり、定位置を失いシーズンを通し控えにとどまった。2020年シーズンは、負傷者が相次ぎ猫の目のように出場選手が入れ替わる展開の中、ほぼシーズンを通して中心選手として活躍してくれた。
 元々、運動量とボール奪取力には定評があったが、ボールの散らしや縦への展開も着実に成長している。もちろん、まだまだ課題もあり、特に相手チームのペースになりチーム全体が落ち着きを失った状況で立て直せるほどの存在感は示せていない。
 常識的に考えれば、それなりの移籍金を残してくれたことだろう。そして、レイソルからは大谷秀和の後継者との期待も感じられる。大成を期待したい。

 その他にも、このシーズンオフ、ベガルタを去る選手は多い。
 キムジョンヤと兵藤慎剛の両ベテランがチームを去るのは、チーム編成上の問題だろうか。この2人は存在感は格段で、起用されれば格段のプレイを見せてくれていた。キムジョンヤの落ち着いた守備と正確なフィード、兵藤の精力的な運動量と展開、いずれもとても魅力的だった。ありがとうございました。
 ジャーメイン良は、縦に出る速さと左利きが魅力のFWだが、3シーズンのベガルタ生活で大成はできなかった。そろそろ河岸を変える選択は妥当かもしれない。

 このオフには、他にも多くの選手がベガルタを去った。多くの選手が新たにやってきた。
 別れと時代を繰返し、時代はめぐるのだ。
 そして新たなシーズンが始まろうとしている。

2021年02月11日

川淵さん、この仕事はあなたには向いていません

 川淵三郎氏が、東京五輪の組織委員会会長に就任するらしい。私は憂いている、過去多くのことをなしとげてきたこの元日本サッカー協会会長だが、この仕事は向いていない。下手をすると、氏の晩節を汚すものにもなりかねないと。
 私の心配の理由は明白だ。川淵氏は「こちらに進むことが正しい」と明確な状況で、格段の推進能力を発揮し、成果を挙げてきた人だ。しかし、「どちらが正しいか不明確」な事態を軟着陸させることは不得手なのだ。そしてそう言った不明確な事案に不適切な判断をしてしまったこともまた多い。さらにその不適切な判断が明白になった後の態度は、とてもではないが褒められたものではなかった。
 疫病禍の世界の中、「やるのかやらないのか」意見が二分している東京五輪。その責任者は、典型的な「どちらが正しいか不明確」と言う仕事なのだ。繰返そう、川淵氏はこう言った「どちらが正しいか不明確」な仕事には向いていない。

 改めて、氏の業績を振り返ってみよう。
 まず言うまでもなく、Jリーグの設立である。これは、単にサッカーのプロフェッショナル化に成功しただけではない。地域密着を重視し、日本には従来定着していなかったクラブを軸にした、プロフェッショナルスポーツの確立に成功したことが重要だ。
 ただし、川淵氏の功績はJリーグの制度設計をしたことではない。制度設計をしたのは、森健兒氏や木之元興三氏だったことは、よく知られた話だ。けれども、川淵氏がいなければJリーグ設立がおぼつかなかったことは言うまでもない。既得権など多くの障害を、時には強引な手腕で取り除いていったのは川淵氏の功績だろう。
 中でも、各クラブ名から企業名を外し、地域密着を明確化することを定着させたことは、大きな功績だ。たとえば、ガンバ大阪は当初新クラブ名を「パナソニックガンバ大阪」にすると発表していた。そう言った参加クラブと所在地自治体を丁寧に説得した主役は川淵氏だった。さらにその施策に納得しなかった読売クラブの出資団体のトップと丁々発止を繰り広げたのも懐かしい。
 また、Jリーグ最初の10クラブの選択においても、氏は剛腕を発揮する。当時JSLの2部所属だった鹿島アントラーズ(当時住金)や、トップリーグでの実績がまったくない清水エスパルスを選考した政治的判断を行ったのだ。鹿島は選手ジーコを加入させ専用競技場を作りホームタウンとしての充実を訴求した。清水は、80年代以前から少年の育成プログラムを確立し優秀な選手を多数輩出しており、大人のトップチームの登場が期待されていた。これらの特殊事情を加味し、川淵氏は両クラブを選考したのだ。一方で、同様にプロ志向を持っていて両クラブより過去の実績が高かったヤマハ(現ジュビロ磐田)、フジタ(現湘南ベルマーレ)、日立(現柏レイソル)と言ったクラブが選考されなかった。しかし、結果論だが当時の政治的判断を評価すべきだろう。結果的に、鹿島、清水、磐田、湘南は後年アジアのタイトルを獲得したし、柏にしても複数回国内タイトル獲得したのみならずクラブワールドカップでも活躍、いずれも30年にわたり国内のトップクラブとしての活躍を継続しているのだから。
 チーム名と10クラブ選定は、「とにかく地域密着したプロフェッショナルリーグを成功させるべし」と、(サッカーのことを理解している人ならば)誰でも賛同する目標に向かった、川淵氏の精力的な活動の賜物だ。そして、このような強引にでもゴールを目指して突破し、ゴールネットを揺らす。これが川淵氏の最大の特長なのだ(残念ながら私は川淵氏の現役時代のプレイは知らないのだが、どうもそのような選手だったらしいが)。
 加えて、Jリーグ黎明期の成功の伏線として、技術委員長としての日本代表チームでの成功も挙げられよう。川淵技術委員長は、日本代表の初めての外国人監督としてハンス・オフト氏を招聘した。オフト氏はヤマハやマツダ(現サンフレッチェ)で見事なチーム作りを見せていた。オフト氏や、読売クラブを率いたカルロス・アルベルト・ダシルバ氏と言った外国人監督の卓越した指導実績を見れば、心あるサッカー人は皆「日本代表に優秀な外国人監督を」と願っていた。しかし、当時日本協会内には外国人に代表指揮を委ねることに反発する向きも多かったと言う。川淵氏は、そういった外野をねじ伏せ、オフト氏を招聘。直後、日本代表はダイナスティカップ(東アジア選手権の前身)、アジアカップを連続制覇。川淵氏とオフト氏は、誰も見たことのなかったアジア最強の日本代表チームを私たちに提供してくれたのだ。

 言うまでもなく、Bリーグを誕生させたのも川淵氏の功績だ。
 本件の詳細は、私の友人でもある大島和人氏の著書「B.LEAGUE誕生」を読んでいただきたい。20年にわたり混迷を継続していた日本バスケット界。川淵氏は、タスクフォースのトップ、さらには日本バスケット協会理事長として、圧倒的な行動力で問題を解決し、統合したBリーグを設立に成功した。
 この頃、日本バスケット界は完全に追い込まれていた。トップリーグが統合されていない(当時のNBLとbjリーグに分裂)ことなどを理由に、2014年11月に国際バスケットボール連盟(FIBA)より国際試合の資格停止を宣言されていた。そして、2015年8月までにその資格停止を解除できなければ、国際試合で好成績を収めている女子代表が、リオデジャネイロ五輪予選に出場できない危機を迎えていた。
 2015年1月にタスクフォースのトップに就任された川淵氏は、強引ながら見事な手腕を発揮。NBLでもbjでもない新たな第3のリーグを設立する方向で話をまとめ、8月には資格停止解除に成功した。
 女子代表はアジア予選を勝ち抜き、リオデジャネイロ五輪本戦でもベスト8進出に成功。2016年9月に開幕したBリーグは、NPB、Jリーグに次ぐ第3のプロスポーツとして成長を遂げている。
 「トップリーグ統一を具体化しなければならない(さもなければ強力な女子代表が五輪への夢を絶たれてしまう)」と言う、誰もが(バスケット好きでなくとも)解決しなければならないと思うゴールに向かい強引に突破を行い、ここでもゴールネットを揺らすことに成功した。正に川淵氏の真骨頂とも言うべき活躍だった。

 ここまで、川淵氏は「こちらに進むことが正しい」と明確な状況で、格段の推進能力を発揮した事例を述べてきた。改めて振り返ってもすばらしい実績ではないか。

 けれども、そうでない場合、「どちらが正しいか不明確」な事態への氏の対応は、必ずしも芳しいものではなかった。
 例えば、フリューゲルス消滅事件。経営危機から、当時の横浜フリューゲルスと横浜マリノスが変則合併を申請してきたことを、当時Jリーグチェアマンの川淵氏が認めてしまった事件だ。難しい判断が必要だったとは思う。しかし、当時も語ったが、「川淵氏(および氏の周辺)がサッカー的見地からしっかりした姿勢を保っていればこの事件は防ぐことはできたのではないか」との思いはぬぐえない。このような錯綜した事案については、思い切った判断より軟着陸が重要なのだ。結果、横浜フリューゲルスと言うすばらしいクラブが消滅、中途半端な合併により後継クラブも立ち上げられなくなってしまった。関係者の尽力もあり、横浜FCが立ち上がったが、以前も書いたがこのクラブは「ある意味において明確にフリューゲルスと言うクラブの後継クラブ」である。横浜FCはフリューゲルスとは別なクラブなのだ。そして、多くの人に引き裂かれそうな悲しい思いを残し、微妙な歴史を作った責任は川淵氏にある。

 日本サッカー協会会長時の業績も少々怪しい。何より、2002年ワールドカップ終了後のジーコ監督招聘周辺。川淵氏が、オフト氏招聘を行った1992年は「優秀な外国人監督を招聘すればよい」と言う時代であり、JSLで格段に実績あったオフト氏招聘は成功を遂げた。しかし、2002年ワールドカップ終了時は違っていた。「2回連続でワールドカップ出場し、地元大会で優秀な若手選手を軸に2次ラウンドまで進出した日本代表、誰を監督とするのが最適か」と言う非常に複雑な問題に最適解を求める必要があった。そして、氏はジーコ氏を選択した。
 結果的にはこの判断は失敗だった。2006年のワールドカップで日本は1次ラウンドで敗退してしまったのだから。私自身ジーコ氏招聘は失敗だったと思うが、ジーコ氏率いる日本代表は苦戦を重ねながらアジアカップを制覇したステキな思い出もあることも否定しない。まあ、代表監督選考に正解はないのだ。
 問題は2006年大会敗退後の川淵氏の振る舞いだ。氏は、ワールドカップ終了後、唐突に当時Jリーグのジェフですばらしい采配振りを見せていたイビチャ・オシム氏を強奪したのだ。川淵氏はジェフの前身古河の出身だが、このような発言をされている。
「今日、イビチャ・オシム監督と日本代表の監督としての契約をできることを非常に嬉しく思っています。その反面、千葉のチーム関係者やサポーターの皆さんには色々なご心配や、納得の行かないこともあると思いますが、オシム監督を日本代表チームに送り出してよかったと思える日が早くくることは間違いないと思っています。」

  悲しかったのはジーコ氏招聘の失敗ではない、自分の責任を取り繕うようにオシム氏の強奪に走ったことだった。

 ドーピング冤罪事件。詳細は木村元彦氏の「争うのは本意ならねど」を読んでいただくのが一番。一言で言えば、誤った報道からはじまり、関連した医師のミスから発生した事件。川淵氏は本件について不適切な収拾を行った。結果、1人のアスリートに極めて理不尽な対応をしたのみならず、日本のスポーツ医療界に不適切な事例を残しかねないまで事態を悪化させた。これは論外の失態と言えよう。川淵氏の本件に関する一連の態度は許すことのできないものだ。

 以上述べてきた通り、川淵氏は「どちらが正しいか不明確」な事態を的確に判断できる人ではない。もっとも、どんな人間だって不適切な判断をしてしまうことはある。しかし、川淵氏は、自身の不適切な判断が明白になった後の態度(あるいはその収拾策)が、自分の権力保持を目指しているとしか思えない非常に残念なものだったのだ。
 おそらくだが、この人はスポーツを愛し過ぎているのではないか。
 川淵氏は、サッカーにせよバスケットにせよ、よい意味でも悪い意味でも、スポーツがからむと格段の使命感を発揮する。まあ、目立ちたがり屋とも言うのかもしれないがw。そして、上記した論外とも言える権力獲得後の自己保身も、スポーツを愛するが故に己の権力を否定されることを恐れてのものだと思えてならない。
 そして、おそらくだが、己の過去の成功がどこにあったかは気がつかず、自分が「万能の神」と誤解しているのではないか。

 かくして私は憂慮している。「やることが正しいのか、やらないことが正しいのか、それとも延期なり異なるやり方を模索すべきなのか」どうするのが最適解なのか、誰もが判断に迷うこの疫病禍の中での東京五輪。84歳の川淵三郎氏は、およそ彼には向いていない仕事に取り組もうとしている。
 もちろん、IOC、JOC、日本政府、東京都、そういったステークホルダ間で、今夏の東京五輪は中止なり延期が合意に至っているならば、話は別だ。そこの収拾、特にアスリートへの説得や説明に、川淵氏が走り回るならば、川淵氏の一番得意な仕事となる。しかし、各種報道を読んだ限り、とてもそうとは思えない。「やるのか、やらないのか」最も厄介な意思決定はこれからなのだ。そして、幾度も繰返すが、そのような厄介な意思決定は川淵氏が最も不得手とするものだ。

 ここまで、辛辣な批判を含め、川淵氏への思いを語ってきた。
 最後にホンネを少し。私は何のかの言って、川淵氏が好きなのだ。80年代後半だったろうか、JSLの古河の試合、大雨で閑散とした競技場、偶然隣同士になって2人で傘をさして試合観ながら語り合ったのが忘れられない。「日本のサッカー、こんなにレベル上がったのに、どうしたら客が増えるだろうか」って私は尋ねた。「難しいですねえ、でも何とかしなければ」と答えてくれた川淵氏。
 川淵氏の大変な尽力で、我々はJリーグも強力な日本代表チームを入手した。ドーピング事件は許せないが、氏の過去の栄光には感謝の気持ちが大きいのだ。
 だからこそ、川淵氏に言いたい。この仕事は引き受けるべきはないと。

2021年01月27日

高校選手権決勝2020-21

 決勝戦が点の取り合いからPK戦にもつれ込む激闘になった高校選手権。まずはこの疫病禍の下、無事大会を終えられたことに、関係者すべてに敬意を表したい。

 決勝戦。前半、戦闘能力的に優位を伝えられた青森山田に対し、山梨学院はみごとな対応を見せた。テレビ桟敷で見ていた限りでは、最前線でのフォアチェックと後方の分厚さと、両サイドの裏を突く速攻が両立。右サイドの裏を突き、逆サイドに振った展開から、広澤が絶妙なトラップから決め先制。余談ながら、山梨の先制点を決めた広澤は、我が少年団の教え子の中学時代のチームメートなのじゃw。そういう意味でこの一撃は嬉しいものだった。試合終了後に山梨長谷川監督が自慢していたが、センターバックの藤原をマンマークをする策だったのか。山田は急ぎ過ぎで単調な攻撃が目立ち、1-0のまま前半終了。
 しかし、ハーフタイムを経て青森は落ち着きを少し取り戻す。急ぎすぎた攻撃を改善し、アンカーの宇野がよくボールを触るようになる。当たり前の話だがセンターバックの球出しをフォワードが押さえに行けば、アンカーへのケアはおろそかになる。宇野は仕事が途切れない選手で、DFラインに入ってボールを受け、他のMFにさっさとボールを散らし、スルスルと後方に動きフォローする。その位置取りが絶妙で、山梨の激しいプレスがズレ始める。そして、ロングスロー崩れから57分に山田が同点に追いつく。
 さらに山田はしたたかさを見せる。山梨の先制点を決めた広澤がスパイクの交換のためピッチを去り1人少なくなった山梨の守備の薄さを突き、右サイドを崩し逆転したのだ。山梨にとっては痛恨のミス。
 勢いに乗って攻めかける山田の猛攻にさらされるも、山梨は丹念に守る。山梨で感心したのは、どんなに山田のプレッシャーがきつくても、ボールを奪って逆襲するのに無謀な縦パスを使わないこと。藤原を軸にした山田の中央守備は非常に強いので、安易な縦パスは山田にボールを再提供し連続攻撃にされ一層つらくなることを、山梨各選手が的確に理解していたわけだ。余談ながら、山梨は前々日の準決勝帝京長岡戦では、押し込まれた場面で大胆な縦パスをねらっていた。相手によって戦い方を変えられるのだから大したものだ。
 山梨の同点弾、素早くセットプレーをつなぎ、笹沼がいやらしいスルーパスで好機を演出、ゴールキーパーとセンターバックがそれぞれ必死に跳ね返そうとしてこぼれたボールを、冷静に野田が決め同点に追いついた。どんな厳しいプレッシャにさらされても、丁寧なパスをねらった山梨の面目躍如たるものがあった。
 追いつかれた山田は猛攻をしかける。セットプレーから藤原のシュートがポストを叩き、終了間際には仙石がグラウンダのクラスを全くフリーで外すと言う場面もあった。このあたりは、まあ運と言うものだろう。
 2-2のまま、試合は延長に入る。山田の選手達は、延長に入り最後の力を振り絞り、「前に前に」と進んだ。この山田のあくなき前進意欲は、山梨にとっては幸運だったと見る。結果的に山田の攻撃は単調なものとなり、この日大当たりだったGK熊倉と、集中を切らさない山梨の守備陣に読みやすいものになったのだ。この延長の20分間、山田の前線の各選手がもう少し冷静だったら、あそこまで「前に前に」ではなく、もっとゆっくり攻めることができたと思う。何より、山田にはボールを散らし、変化をつけることができる、宇野がいた。「前に前に」急ぐ選手の1人でも「このまま勢いで前進するより、宇野で一拍おいて変化を付けた方がよい」と気がつけば、延長の20分間に山田が得点するのはそれほど難しいことではなかったと思う。黒田監督もそのようなことは百も承知だったろう。けれども、どんな優秀な演出家がいても、踊りを踊るのは踊り子なのだ。PK戦時、大映しになる黒田監督の悔しそうな表情に、監督業の難しさを改めて感じた。
 PK合戦。おそらく両チームは、それぞれのキッカーの癖やGKの特徴など、綿密なスカウティングを行っていたはずだ。山梨がこの大会3回目のPK戦、私は山田優位かと思っていた。しかし、山田には「PKに持ち込まれてしまった」と言う思いがあり、山梨はよい意味で自己顕示力の強いGK熊倉がいた。

 戦闘能力と言う視点からすれば、山田はJユースを含めたこの年代では最強のチームの1つ、毎シーズンJリーグユースと伍してプレミアリーグでも上位を占めているのが、その証左。各選手のテクニック、局面の判断力、鍛えられたフィジカル、もともと素質に恵まれ、向上意欲も強い選手たちが、黒田監督の下よく鍛えられている。
 この強豪にいかに対するかが、この高校選手権の各チームの課題だったともいえる。山梨が見せてくれた答は簡単なもの、局面の技巧で対抗すると言うものだった(実施するのはとても簡単ではないのですが)。山梨は後方を固め、CBに厳しいプレスをかけて山田の展開を狭くした。その上で両サイドバックの裏を突いて速攻をかけ、敵陣に持ち出しても急がずに丁寧に崩しをねらった。先制点、逆サイドからのグラウンダのセンタリングを受けたときの広澤の正確無比なトラップ。2点目、バックラインとゴールキーパーの中間に通した笹沼のなんともいやらしいスルーパス、ボールがこぼれてきてフリーだったとは言え、ゴールカバーに入った藤原が処理しずらい頭の横をねらった野田の正確なシュート。もちろん、このやり方はリスクがあり、前線に人数をかけて崩しを狙えば、ミスが起こると逆襲速攻を食らう。それでも山梨は、このやり方を110分間やり切った。山田はそれでも、相当数回の決定機をつかんだがネットを揺らしたのは山梨と同じ2回にとどまった。もはや、そこはサッカーの神様の思し召しなのだろう。
 昨年決勝、セットプレーから0ー2とリードされた静岡学園は、伝統とも言うべき各選手の個人技で、山田のプレッシャーを外し終盤逆転に成功した。同じく昨年の準決勝、帝京長岡は各選手の技術であと1歩まで山田を追い詰めた。
 日本代表がブラジルやスペインに勝とうとするときの手段を示唆しているものだと思う。

 今大会もベスト4に進出した矢板中央のベンチには、あの帝京高校の名将古沼先生がいらした。一方山梨学院のベンチには、ミスター山梨サッカーとも言うべき横森先生がいらした。お二人が、70年代以降の日本サッカーを礎を築いてくださったことを言うまでもあるまい
 一方で青森山田の黒田監督が、着々と見事なチームと人材を輩出しているのは言うまでもない。さらには、長谷川監督のように教員の資格を持ちながら、色々なチームを適切に強化ししているプロの指導者もすばらしい。
 各チームが見せてくれた鮮やかな攻防に、改めて日本サッカー界の厚みを感じた高校選手権だった。

2021年01月15日

佐藤寿人の引退

 佐藤寿人が引退する。
 知的な位置取りと、守備ラインの裏に飛び出す瞬間のボール扱いの正確さと、一瞬のスピードの速さですり抜ける。これらの一連の動作で得点を重ねてきた多産系のストライカ。さすがに30代後半となり、一瞬のスピードが衰えてきたことで、思うように点が取れなくなったと言うことだろうか。引退はしかたがないことなのかもしれない。
 私はこの小柄なストライカが大好きだった。何よりも、いかにも知的な得点の奪い方が好きだったのだ。もちろん、若く伸び盛りの時期にベガルタに在籍、毎週のように成長を重ねてくれたこともあるけれど。
 一方で、敵として迎えるにこれほど恐ろしいストライカもいなかった。守備ラインがきっちり揃っていたとしても、ほんのわずかの隙を見つけて、ささっと点をとってしまうのだから。
 寿人にとっても、サンフレッチェと言うクラブにとっても、そして我々寿人びいきのサッカー狂にとっても、寿人が全盛期にサンフレッチェと言うクラブに在籍できたことは幸せなことだった。東洋工業時代からの伝統を持ち、若年層選手育成の独自方式を立ち上げ、必ずしも潤沢な経済状況でないにもかかわらず常に強いチームを作るサンフレッチェ。このクラブだからこそ、このストライカを軸にチームは作り込まれた。もし寿人が、もっと潤沢な資金を持つクラブに所属していたらどうなっていたことだろうか。おそらく同じポジションにレベルの近いストライカーが補強され、寿人を中心としたチームが作られなかった可能性がある。
 このストライカーが点をとるためには、チーム全体がこのストライカに点を取らせると言う意識を持つことが重要なのだ。

 もちろん。
 ベガルタサポータサポーターとしては今でも思う。サンフレッチェと優勝を争った2012年シーズン、佐藤寿人がいなければ、いや佐藤寿人がもう少し凡庸なストライカーであれば、私たちは夢のタイトルを獲得できたのではないかと。
 思うに任せないから人生もサッカーも楽しいのだけれども。

 寿人の映像を初めて見たのは、ユース代表の頃だった。瞬間的なスピードで一瞬のうちに守備ライン後方に抜け出し、ピタリとボールが止まる。パオロ・ロッシとか、ロマーリオとか。一瞬のうちに抜け出すことができても、とうとうボールが止まらなかった武田修宏を思い出しながら、期待は高まった。過去日本サッカー界で、そのスピードと技術を同時に実現したのは寿人を除けば、70年代に活躍した日立の松永章くらいではなかろうか。もちろん小柄でも、寿人と同年代の田中達也とか大久保嘉人とか、格段の個人技があればまた違うストライカ像が実現できようが。
 ベガルタとともにJ2に落ちた2004年シーズン、寿人を見るのは楽しかった。すり抜けとともに瞬間的なボール扱いがどんどん向上するのを楽しめたからだ。そして、サンフレッチェに移籍し、J1の厳しいプレッシャーの中で鍛えられる中で、敵の複数のディフェンダーの間や裏をうまく突く位置取りもどんどんうまくなっていった。

 当然、私は寿人が代表で活躍するのを夢見ていた。けれども寿人はあまり日本代表では活躍できなかった。要因は2つあると見ている。
 日本代表には、寿人とタイプは異なるが、より若く同じように動き回る岡崎慎司と言う得点力に秀でたストライカがいたこと。正直言って、寿人と岡崎を同じチームにおいても機能するとは思えない。寿人と同年代のFW前田遼一ならば、岡崎にスペースを与えることができたのだが。
 そして、寿人と言う、この異能の点取り屋の特性そのもの。このストライカは、チーム全体が己に得点をとらせるべく機能することで、その才覚を発揮できる選手だったのだ。言い換えると、寿人はスタメンで起用され、他の10人が寿人に点をとるよう尽力することが必要だったのだ。寿人の全盛期の代表監督の岡田氏もザッケローニ氏も、そのようなチーム作りを行わなかった。たまに起用されるとしても、スーパーサブとして試合の終盤に点を取るような仕事を要求した。
 ちょっとほろ苦い思い出もある。南アフリカ大会予選、敵地バーレーン戦。大差でリードしているにもかかわらず、終盤起用された寿人の軽率なプレイ(点をとりに行ってしまった)で、日本代表は苦戦を強いられたこともあった。寿人としては、代表の短い出場時間で結果(つまり自らの得点)を出したかったのだろうが。だからこそ、岡崎が不在の試合で寿人を使ってほしかったこともあった。
 贅沢は言うまい。若い頃大成を期待した素質豊かなFWが、愛するクラブで経験を積み成長の礎をつかみ、トップレベルのストライカとなり多くの美しい得点を見せてくれた。さらに言えば、私たちがたった1回つかみかけたリーグ制覇の夢まで刈り取ってくれた。これほどの愛憎を味合わせてくれた男に、これ以上何を望むと言うのか。
 寿人の得点の一つ一つの得点を思い出し、寿人が積み上げた努力を推測し、反芻する。これからの人生の大いなる楽しみでもある。

 あのトップスピードでの正確なボール扱いを、別な若者でまた見たいと思うのは、年寄りの欲目なのだろうか。
 佐藤寿人氏が、素晴らしい指導者になってくれることを期待するものである。
 ありがとうございました

2021年01月05日

‪ルヴァンカップ決勝2020-2021年

 ルヴァンカップ決勝、FC東京2-1柏レイソル。
 多くの関係者が苦労に苦労を重ね、この決勝戦が成立した。
 延期となったこのルヴァン杯決勝だけではない、Jリーグ、天皇杯、そしてACL。この疫病禍の下、よくもまあ、シーズンすべてを無事終えられたものだと思う。すべての関係者の皆さんに感謝したい。
 サポータを含む両軍の関係者、Jリーグ当局、それぞれの方々にとっては、COVID19で延期し苦労を重ねた決勝戦と記憶される試合となるのかもしれない。それはそれで貴重で大切な記憶となるだろう。
 一方で私はこの試合を「レアンドロと森重の決勝戦」と長く記憶することとしたい。
 
 レアンドロの先制点。
 まず左オープンに飛び出すすばらしいオープンへの走り込みから始まった。自軍左サイドに飛んだロビング、左サイドバック小川が競り勝つと信じ、左サイドに開いて、見事に受ける。この受けが格段で、利き足の右でキープに成功、右インサイドでグッと縦に出し、マークしているヒジャルジソン〈だったと思う)を振り切り、ペナルティエリアに進出。応対したCB大南と山下には直前の縦突破の残影があったのだろう。大南は明らかに縦を警戒し、山下も縦をカバーに入る。ところがレアンドロは、今度は右アウトサイドで中に切り返す。この切り返しが絶妙、大南をカバーした山下も一気にはずし、右足で振りが速いグラウンダのシュート。必ずしも強いシュートではなかったが、振りの速さとコースが絶妙、ボールはネットを揺らした。「レアンドロの個人技」と言うのは簡単だが、受けのうまさ、縦突破の精妙なボールタッチ、横突破で2人を外す、正確なグラウンダのシュート、4つ見事なプレイを連続したのだから恐れ入る。
 テレビ桟敷で愉しんでいた立場としては、解説していた内田篤人氏が、「レアンドロは乗ると本当にすばらしい、ただ性格が…」と語ったのが、この美しい得点への一層の彩りとなったわけだが(でも、この内田氏の蘊蓄を聞くことができたことよりも、このレアンドロのシュートを現地で見られて方々への羨望の方が強いな)。

 前半早々にリードした東京は、4-5-1でブロックを組み丁寧に守備を固める。リードした東京は、1トップの永井の高速かつ広範なフォアチェック、アンカーの森重を軸にインサイドハーフの東と安部が何とも気の利いたプレイで、柏のエース江坂への有効ボール提供をさえぎる(長駆の後、しっかり仕事ができる安部は、今シーズンJリーグ最大の発見の1人と言ってもよいかもしれない)。江坂にボールが入った瞬間の森重がまた絶妙、江坂にシュートや突破を許さず、オルンガやクリスティアーノへのパス供給もさえぎる。
 加えて、右ウィングの原大智が機能した。いわゆる4-5-1あるいは今風の4-3-3の右ウィング、守備に回っては数十メートルの疾走を繰り返し、攻撃に入った時はスペースを巧みに活かし、いやらしいところに飛び込みシュートを狙う。大柄で強さのあるフォワードが、献身的に攻守に貢献する。そう言われてみると、30数年前に同じ名字の献身的で得点力あふれるストライカがいたのと言うことを思い出した。ただ、30数年前の原は、今の原ほどボール扱いはうまくなかったし、身長も10cmくらい低かったけれどヘディングはずっと強かった。今の原は、もっとヘディングの鍛錬は必要だな。
 かくして、柏はほとんど好機をつかむことができず前半を終える…はずだったが、試合は予想外の展開となる。

 柏の同点ゴール。
 CK崩れのこぼれ球が浮き球になったところで東京GK波多野に対して、柏主将の大谷が体を寄せる。波多野はこの大谷の狡猾なプレイに惑わされたのだろう。難しいフィスティングではなかったはずだが、目測をあやまったか、ボールに的確に触れず。バーに当たったボールを、瀬川が落ち着いて決めて同点となった。この手のビッグゲームでは、滅多に見られないミス、若いゴールキーパーの経験不足と言うにはあまりにも軽率だった。ベテランGK林の負傷離脱がこういうところに聞いてくるとは。
 もっとも、FC東京が優勝した今となっては、このミスは波多野にとっては最高の失敗経験となったかもしれない。波多野の大成を期待したい。

 同点に追いついた後半、柏は有効な攻撃が増える。
 オルンガが左右に動いて、東京の4DFを揺さぶり、江坂もよく動きボールを引き出す。セットプレイから決定機をつかむなど、攻撃の質は格段に上がった。
 一方で、森重がすばらしかった。特に江坂が巧みにサイドに開いてボールを受けても、無理な追い込みはせずに、丁寧にディレイ。江坂は工夫を重ねるが、オルンガに有効なパスは出せない。
 長谷川監督は65分過ぎに東→三田、原→アダイウトンと交替。これだけの大駒をベンチに残しておけるのは、選手層の暑さの賜物か。
 アダイウトンの決勝点。偶然に上がったロビングが微妙に守備ラインの裏へ飛ぶ。狙いすましたラストパスではなかったことが、東京に幸いした。柏の左サイドバック古賀は的確に対応していたのだが、偶然のボールゆえボールへのアプローチが一瞬遅れた。アダイウトンのすばやいトーキックを褒めるしかあるまい。

 考えてみれば、この日の3得点は、いずれも微妙なDFの対応不首尾によるものだった。J終了後の2週間と言う微妙な間隔が、選手の守備感覚に影響したのかもしれない。

 東京にリードされたところで、ネルシーニョ氏が3枚替え。大谷から三原、瀬川から神谷、この2つは、元気な選手の投入と言う意味で理解できるが、エースの江坂に変えてストライカ呉屋の起用は驚いた。たしかに、森重を軸にした見事な守備に、江坂はここまで沈黙していた。老獪なネルシーニョ氏は「今日は江坂ではない」と考えたのだろうか。このあたりの、果断な決断はいかにもこの老監督らしいなと思った。しかし、あくまでも結果論に過ぎないが、この江坂の交替は失敗だった。結局、柏はオルンガに高いボールを入れるしかなくなり、森重が固める守備を崩すことはできなかった。

 レアンドロの鮮やかな得点と、森重の知的守備を愉しめた決勝戦だった。
 改めて、この決勝戦を実現し、今シーズンの全日程を終えることができたことに感謝したい。そして、来シーズンは、降格もW杯予選も(やれるのかわからんが五輪も)こなさなければならず、もっと厳しくなる。
 などと、今から悩んでもしかたがないな。まずは、皆で休みましょう。
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2021年01月02日

天理大フィフィタのラストパス

 毎年1月2日は、高校選手権と箱根駅伝とラグビー大学選手権準決勝のテレビ中継が錯綜。ラグビーフリークの息子と、チャンネル争奪戦となり、テレビの2画面表示やパソコン画面を併用して乗り切るのが常となっている。
 で、今日のお題は大学ラグビー。天理大が明治大に快勝して決勝進出を決めたわけだが、天理の中心選手センターのシオサイア・フィフィタのプレイ振りに感心したのだ。息子によると、昨シーズンまでは、いかにもトンガ出身らしいゴリゴリ前進するところのみが特長の選手だったらしい。しかし、今日のフィフィタは、持ち前のゴリゴリを活かしながら、変幻自在のパスを操る選手となっていた。そのパス出しの柔らかさと緩急の使い方が格段で、敵の守備選手からすると非常に守りづらいものとなっていた。
 その典型が、とどめの6トライ目。ラックからSH藤原忍が素早くSO松永拓朗にパス(この2人もとてもパスのうまい選手だった)。松永がワンフェイント入れて、後方から前進するフィフィタへ。フィフィタはズドドドドドと約30m前進、あと数mでトライと言うところまで進む。明治守備が「あわわわわ」と何とか止めに入った瞬間、突然右サイドで前進する味方ウィング土橋源之助に約20mの横パスをピタリと通し、土橋はまったくのフリーでトライを決めた。すばらしいラストパスだった。
 後から何回か映像を見直したが、フィフィタはパスを出す直前に一瞬首を振って右サイドを見ている。とは言え、前後左右から5人の明治守備者が近づいている状態で、トップスピードで前進し、まったく直角方向に正確なパスを通した技術はすばらしい。もちろん、トップスピードで前進し、敵守備陣には自らが突破しトライをねらっていると思わせて逆を突く発想と判断も最高だった。
 このような変化を加えた攻撃は、サッカーと比べると一層難しい。こういった前進方向と直交するパスは、ラグビーではどうしても山なりになる。そして、この手の山なりのパスは、ラグビーの場合相手守備者にインタセプトされると一気にそのまま100m近く走られる逆襲のリスクがある。決まった時は鮮やかだが、危険も大きい(もっとも、この場面では、フィフィタのズドドドドドが非常に速かったので、土橋をマークする守備者は明治陣に向っていたので、一発逆襲の危険は低かったのは確かだが)。
 ともあれ、このような変化ある攻撃は本当に楽しいものだ。ただ、見ての感動ももちろんだが、サッカーとラグビーの兄弟性の合わせて考えることもできるし。
 上記したが、天理大のSH藤原もSO松永は変化あるパス出しが見事な選手だが、この2人の展開後にフィフィタの前進または再展開がくるから、天理の攻撃変化はすばらしいものがある。もちろん、FWの強さも格段なのだが。早稲田大との決勝戦が楽しみだ。 

 日本で、変化あるパスのうまいセンターと言えば、ラファエレティモシーと言うことになろうが、フィフィタはラファエレよりパスの射程が長いのではないか。長い射程のパスと言えば、田村優だが、前進能力はフィフィタが格段だ。
 先日のワールドカップ抽選、昨年の好成績もあり、せっかく第2シードでの抽選となったが、よりによって第3シード最強のアルゼンチンが来て、相当厳しいグループとなってしまったジャパン。フィフィタのような若いタレントがもっともっと出てくることを期待したい。その前に、フィフィタがジャパンを選択してくれることが大事なのだが。

2021年01月01日

2021元日、天皇杯決勝

  あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 天皇杯決勝2021年元日、病禍禍下にもかかわらず、幸運にもチケットを入手、天皇杯決勝を堪能した。

 試合そのものは、フロンターレがガンバを圧倒。多彩な攻撃で幾多の決定機をつかみ、後半55分に先制。その後も多くの好機をつかみながら決め切れず。最後の15分にガンバが反攻したものの、鄭成龍、ジェジエウ、谷口の中央は揺るがず。きっちりと、フロンターレが1-0で逃げ切り、堂々と日本一を獲得した。

 フロンターレのすばらしさは、全選手に徹底している勤勉さ。他チームと比較して、技巧に優れた選手たちが皆丹念に動き続け、パスコースを作り丁寧につなぎ続ける。さらに、味方がボールを奪われた瞬間の切り替えの早さが格段、全選手がボール奪取に動き、敵のボールキープを妨害し絡めとる。相手チームからすれば、下手にボールを奪い、味方がキープするために位置取りを変えた瞬間に、フロンターレ選手複数がボール奪取に絡んでくるのは悪夢だろう。真っ当にフロンターレがキープしていてくれた方が安全と思えるほどだ。
 かくして、ほとんどの時間帯、試合内容はフロンターレが圧倒した。
 さらに、ガンバの状況を悪化させたのは、宇佐美の使い方。前半はいわゆる4-4-2の左サイドMFを務めたが、家長、山根、時に田中碧が参画するフロンターレの右サイドの攻撃に対して、長駆の追い込みができないため、ほとんど抵抗ができなかった。後半、ガンバ宮本監督は宇佐美をトップに変更、倉田を左サイドMFに移した。倉田の粘り強い対応により、フロンターレの右サイド攻撃をある程度止めることはできたものの、逆にアンカーに位置する守田へのプレスが弱まり、一層事態は悪化した感もあった。体調が悪いのか、指示が不適切なのか、それ以外の要因があるのかはさておき。
 また今シーズン左DFを務めた登里が負傷したとのことで、フロンターレはこのポジションに新人の技巧派の旗手を起用。旗手は格段の技巧で、変化を演出はしたが、右利きのため攻撃の幅を結果的に狭めてしまった感もある。左ウィングの三苫が右利きの技巧派であることを含め、ここは来シーズンの課題かもしれない。いや、これ以上フロンターレが強くなっても困るのですけれども。
 それでも、終盤まで1点差を維持できたことで、ガンバは反撃を開始。渡辺千真を起用し、パトリックとの2トップで幾度か好機をつかみ、試合を盛り上げてくれた。フロンターレの各選手が75分までの猛攻でやや一息感があったこともあり、ドイスボランチを組んだ矢島と倉田がよくボールを散らし、フロンターレを慌てさせたのだが。
 フロンターレはチーム状態が良すぎることもあり、よいリズムで攻守のバランスがとれていた。そのため、終盤選手が疲弊し始めたところでの交替起用のタイミングが難しかったのかもしれない。あり余る控え選手の適切な起用ができず、終盤慌てることになった感もあった。
 持ち味の美しいボールキープを軸にした変幻自在の攻撃を見せてくれたフロンターレ、粘り強く戦いあと一歩まで持ち込んだガンバ。新年早々、楽しい試合を見せてくれた両軍関係者、それを演出した鬼木、宮本両監督に感謝するものである。

 結果的に、中村憲剛大帝は最後の公式戦に出場せず。ちょっと、いや相当残念なのですが、贅沢を言ってはバチがあたるのだろう。
 でも、もう1回憲剛を見たかった…

 以下余談。
 自分にとっては、はじめての新国立競技場。陸上トラックが邪魔だとか、色々な議論があるようだが、大きな問題を2つ感じた。

 まず1個目は、滅茶苦茶でかいから、自分の席に着くまで最寄り駅到着以降、最低30分くらいを見ておかなきゃいけないこと。その割に、入場口やスタンド入口が少ないように思えた。それでも、今日は入場可能者も少なかったら、何とかなったが疫病問題が解決後、チケットが売り切れ状態時にどのように混乱があるか、ちょっと心配。
 2つ目。噂通りなのだが、前後の隙間がなさすぎる。普通に座ると、前の席の背もたれ後方に足が密着する。なので、移動する人がいると相当難儀する。今日は、1人おきの配席で隣が不在だったこともあり、移動する人がいたとしても、男の私は足を広げて、その人を通すのは問題なかった。しかし、これが満員御礼状態だったとしたら、相当混乱するだろうな。
 他にも、メインから見て右側のバックスタンドが分離されているなど、基本設計で気になることが多々あるが、まあ別途議論するか。
 
 もう1つ。試合前の国歌。さすがに疫病禍下、我々は歌えない。自衛隊の歌の上手いお姉さんが朗々たる独唱、場内アナウンスが「心の中で歌ってください」と言っていたのには少し笑った。それはそれでよいのですが、その独唱下、オーロラビジョンに中村憲剛大帝を大映しにしても、バチはあたらないだろう、と思ったは私だけだろうか。

2020年12月31日

2020年10大ニュース

 今年の10大ニュースをどうまとめるべきか。何を語ってもCOVID19の影響を抜きには語れないように思えてくる。ただ、この疫病禍の前に起こったことは、記憶から薄れつつあるし、独立して起こった事件もある。そのあたりを自分なりに整理してみた。1位から6位はこの疫病禍に関するもの。7位は少し疫病禍に関連するもの。8位から10位は疫病禍と直接関係ない事案となっている。


1位 とにかくJリーグ完結
 この難しい疫病禍下でとにもかくにもJリーグが無事日程を終了できたことに関係者に敬意を表したい。中断が決まって早々に下位リーグ陥落がないことを決定、さらに再開に向けて、リーグ戦の成立条件や、試合中止の基準を設けるなどの規定を明示化。これらの規定の具体性や現実性には感心した。そして、下記する他の大会との調整、度々襲ってくる疫病禍にも屈せず、全日程を完了したわけだ。
 加えて、ACL(無茶苦茶な日程だったが、これまたとにかく大会を完了したことを評価するしかないか、ともあれテレビ桟敷で見た試合はいずれもおもしろいものだった、VARを除いては)も曲りなりに3チームが出場。天皇杯も幾多の議論を経ながら、J1から2チーム、J2、J3から1チームと言う奇策で帳尻を合わせた(中村憲剛の最後の公式戦として盛り上がり的にも最高の舞台となった)。さらに、ルヴァンカップも、決勝は疫病の影響で延期を余儀なくされ、片方の決勝進出クラブFC東京がACL出場し日程調整が厳しい中で、1月4日決勝と何とか形をつけた。
 もちろん、「帳尻を合わせた」とか「何とか形をつけた」と言う表現は、創意工夫を凝らして日程調整をした方々(各クラブ都合、会場調整など検討しなければならない事項は無数にあったはず)、厳格な管理下で健康状態維持に努力した選手やスタッフなど現場の方々、いずれに大変失礼かもしれない。しかし、このような表現をとらざるを得ないほど、今シーズンの日程をほぼ完全に消化しつつあることは実に見事な業績だったと思っているのだ。
 ただし、本当に大変なのは来シーズンだ。J1は20チーム総当たりで4チームが降格する過去にないタフなシーズンを迎える。後述するがワールドカップ予選も入ってくる。残念なことにCOVID-19の影響もまだまだ続き、突然の中止などの混乱も起こるだろう。それでも、今年の経験を生かし関係者が知恵を絞り、無事来シーズンもこなせることを期待したい。
 とにかく、皆さん、お疲れ様でした。

2位 縮小経済と日本サッカー
 何とかシーズンを無事終えようとしている日本サッカー界だが、経済的状況が深刻なのは言うまでもない。
 当たり前の話だが、この疫病禍の中、J各クラブの観客動員が大幅に減少している。入場可能観客の人数が制限されているのみならず、試合直前までチケットの発売を待たねばならず、思うような販売促進もかなわない。サッカークラブの支出の多くは固定費(そのほとんどは、現場の選手やサポートスタッフ、フロントの人々の人件費)であり、観客動員が少なくなれば自然と収入が下がり、状況が悪ければ赤字化する。
 今シーズンはその打撃が直接各クラブの経営を襲った。頭が痛いのは、来シーズンも同様の事態が起こることだ。また、これは日本協会も同じことで、貴重な収入源である日本代表の試合が思うように行わなれない。Jクラブにしても、日本協会にしても、出資者やスポンサへの還元や、良好な関係作りを行ってきただろうから、ここからの収入が短期的には減らないかもしれない。これども、疫病禍により世界中の景気が後退している状況。出資、スポンサ企業の経営も苦しいのだ。こう言っては身も蓋もないが、サッカー界に入ってくるカネがしばらく減少傾向となるリスクは高い。
 加えて、気になるのは西欧サッカー界でここ30年来続いていた異常な経営拡大基調だ、バブルと言ってもよいかもしれない。最近ではとうとう選手価値の債権化、若年層選手の人身売買的扱いを皆が隠さなくなっている。建前論からもしれないが、人権確保促進や個人情報保護に特に厳しい欧州で、これらの活動が放置されているからくりは、よく理解できていない。そのような状況で、西欧各国は直接的な疫病被害は甚大なものになっている。この状況下で、西欧のサッカー界はどのように収入を確保し、選手達の高給を維持するのだろうか。もし、それが叶わなくなり経済的縮小を余儀なくされた時、西欧サッカー界はどうなってしまうのだろうか。
 悩んでもしかたがないことかもしれない。日本で私たちができることは、それぞれの立場で知恵を絞り、サッカーを楽しみ、そこでキャッシュが回る工夫をすることしかないのだが。

3位 声が出せない観戦
 50年近くサッカーを堪能してきたわけだが、自分にとっては未曾有のつらいシーズンだった。観戦時に、大声を出せないことが、これほどしんどいこととは、思いもしなかった。
 サッカーを見るという行為はうんうんと黙って首を縦に振ってれば良いものではない。相手チームの素晴らしいプレーに悲鳴をあげ、一方で(あくまで主観的だが)審判の不適切な判定に対し野次を飛ばす。これらはこれで、サッカー観戦には得難い楽しみの1つだが、まあこれらは我慢ができる。しかし、何が我慢できないというかと言えば、自分のチームの選手の素晴らしいプレーに対する、歓喜や賞賛や感嘆の叫び声を出せないことだ。これらを我慢するのは極めて難しい。
 再開以降、ユアテックで2試合だけ観戦をしたが歓声を上げられないのは本当に辛いものだと思った。自宅でDAZNしながら絶叫した方が、どんなに気持ちよいことか。余談ながら、指導しているサッカー少年団の試合ならば、ベンチからの指示は許されているので、このようなストレスはない(もっとも、少年サッカーのベンチでコーチがすることは、子供達に「いいぞ、いいぞ」とひたすら褒め続けることだけなのだが)。
 もちろん私はサッカー狂だから、生観戦に勝る楽しみはない。サッカーが見られるならば、大声を出すのを我慢しよう。けれども、多くのサポーターは声を出して一生懸命チームを応援するのは大きな楽しみになっているはずだ。現実的に声を出せないからユアテックには行かないことにしてるんですと語っている人に何かあった。仕方がないこととは言え、つらいところだ。

4位 ワールドカップ、日本代表チームへの不安
 一方で、ワールドカップはどうなるのだろうか。そもそも、22年に計画通りカタールでワールドカップがやれるのだろうか。
 今回の疫病禍となる前の話だが、もともとカタールと言う国でワールドカップ本大会をすることそのものに多くの疑問が寄せられていた。他地域にない高温多湿から11月開催となったのも異例だが、面積の小さな国で観光資源も乏しく、また宗教的な制約から酒も楽しみづらい。ワールドカップと言うお祭りを通じ、私のようなサッカー狂からキャッシュを巻き上げることを生業としているFIFAらしくない開催国選択なのだw。
 そこに加えてこの疫病禍。何がしか合理的な予選を構築し、2022年の春くらいまでには出場国を確定しなければならない。例えば南米では予選が再開しているが、アジア予選は停止したまま。あまりに多くのキャッシュが動く世界最高のお祭りだが、合理的にも、経済的にも、みなが納得する予選形態を、今から構築できるのだろうか。たとえば、大陸をまたがる所属クラブの選手をどのように集め、どのように選手の体調管理を行えるのか。たとえば、選手の所属クラブが、疫病関連で選手の招集を拒絶した場合、どのようなルールでそれを制御するのか。
 日本代表を例にとってみよう。アジアでのアウェイゲーム、欧州クラブ所属選手とJの選手を当該国で適切に隔離管理して準備と試合を行い、それぞれのクラブに戻す必要がある。少々乱暴な言い方をするが、アジア各国のサッカー協会がこれらの管理を適正に行う見極めがつかなければ、欧州のクラブが選手派遣を認めないのではないか。一方で、そのような混乱で、監督が選ぶベストメンバを選考できなければ、日本はもちろんだが、韓国、豪州など欧州クラブでプレイする選手を多数持つ国は対応できなくなる。
 もう1つ、先日欧州でメキシコやカメルーンなどと親善試合ができたのは、1つの成果だし、日本協会関係者の尽力のたまものだと思う。また、欧州クラブ所属選手だけの招集で、曲りなりにもメンバがそろったのも感慨深かった。ただし、代表チームと言うものは、自国、他国いずれのリーグでもプレイしている選手を、監督が自在に選考できなければベストとは言えない。疫病禍と言うのは、この当たり前のことを実現することを難しくしてしまうものだ。厄介なことだ。

5位 交代制限の緩和
 疫病禍で大きく変わったことに、交代選手の人数がある。
 あくまで暫定措置だが、試合間隔が短くなることによる選手の消耗を考慮して、従来の3人から5人の交代が認められた。これは結構大きな影響を与えることになった。とにかく選手層の厚いチームが圧倒的に有利となる。これだけの過密日程で5名交代となると、よほど特殊な監督でなければ、ローテーション的に選手起用を行う。そして、中心選手は休養試合にも貴重な交代要員として試合終盤に登場してくる。
 (選手層が厚いとは言えない)ベガルタサポータからすると、敵が試合終盤にフレッシュな強力なタレントを起用してくると、「う~ん、勘弁してください」と言いたくなることが再三あった。まあ、しょうがないのですがね。
 もともと、連戦となれば物を言ってくるのが選手層なのは言うまでもない。サッカーは11人しか同時に使えないので、潤沢に選手を保有していても宝の持ち腐れとなることも多い。さらに言えば、能力は高いが出場機会に恵まれない選手が何人かいると、よほど監督がマネージメントをうまく行わないと、そこからチーム全体の調子が崩れることもあった。弱者としてはw、そこを突くこともできた。
 もっとも、この傾向は西欧では、ここ20年間先行して見てきた光景ともいえる。いわゆる西欧の金満メガクラブは、トップレベルの選手を20名以上集め、自国リーグと欧州チャンピオンズリーグにローテーション的選手起用を行ってきた。結果的に、疫病禍下での交代人数増の今回のルール変更が、Jにも類似の事態を起こした感がある。
 この交代選手数の制限が、どうなっていくかはわからないが、今後のサッカーの変化の1つの要素として注目したい。

6位 若年層の無観客試合の妥当性
 疫病禍下で気になることがある。それは若年層の大会の観戦が極端に制限され、家族ですら観戦が許されないケースが散見されることだ。ここで若年層大会と言っているのが、高校選手権県予選のように比較的メジャーな大会でも、絵に描いたような草サッカーである私が指導している少年団の大会でも、同じような状況となっている。
 大会主催者が、観戦制限をする気持ちも理解できる。万が一陽性者が出た場合、関与した人々を追跡可能とする必要がある。選手、審判、指導者、運営など試合開始に必須の人の関与を最小にすることで、試合前後の管理の手間を小さくしたいのだろう。ただでさえ、衛生管理や上記必須の人々の記録など、通常よりやることが増えるのだから。
 ただ、親御さんの観戦まで制限がかかるのはいかがだろうか。そもそも若年層のサッカーの最大のサポータは親御さん達であり、サッカーを通して子供の成長を親が楽しむと言う文化は、世界中のサッカーの景色である。もちろん、親による過干渉や、日本テレビ風の美談化には気をつけなければならないが。そして、親御さんの観戦ならば、主催者の管理の手間も極端には増えないはずだ。疫病禍がしばらく継続するにしても、善処を期待したい。
 余談ながら、ラグビーやサッカーのように肉体接触系競技でない、屋外競技の開催制限もよく理解できない。野球で感染増のリスクはほとんど感じないし、テニスなどは適切な管理さえ行えれば、感染増のリスクなど一切ないと思うのだが。

7位 フロンターレ強かった
 とにかく今シーズンのフロンターレは強かった。
 もともと、よい選手をバランスよく集めているこのクラブ。17年、18年と連覇し、昨シーズンも開幕前は優勝候補筆頭と言われていたが、調子が上がらず4位でリーグを終えていた。これは、選手層が厚くなりすぎベストメンバが固められないあたりも鍵に思えていた。さらに今シーズンについては、三苫、旗手と言った五輪代表候補を加え、どのような交通整理をするのか、鬼木監督の手腕が注目されていた。
 しかし、今シーズンのレギュレーションでは、この選手層の厚さをフルに活かし、圧倒的な強さを見せた。特に中盤は、守田、田中碧、大島、家長、脇坂、三苫と誰がベスト11に選ばれてもおかしくない布陣に、重症から復帰した中村憲剛大帝が加わる。そして、ワントップは小林悠とレアンドロ・ダミアンを併用。そして特筆すべきは、これらの名手がボールを奪われた瞬間に一斉に切り替えボール奪取に入るところ。
 この素早い攻撃から守備への切替は、相当な脅威だった。敵からすれば自陣ですら思うようにボールキープできないのも厄介だった。加えて、敵陣でこのようなデュエル合戦に巻き込まれるとボールを奪われるや否や、視野の広い田中碧や大島あたりのロングパスからの速攻にさらされるリスクも高い。攻撃面で強みを発揮する中盤選手を多く保有するチームが、組織的な攻撃から守備への切替を身に付けると、いかに強力なチームができあがるかと言うことを見事に示してくれた実例と言えよう。
 このまま中心選手の保持に成功すれば、来シーズンのACLが楽しみである。

8位 静岡学園(決勝の逆転、井田対古沼の準決勝)
 ちょうど1年前のことになるけれども、今年の高校選手権はとても面白かった。
 決勝戦は名門中の名門青森山田大静岡学園。静学が前半早々に0-2でリードされた時は、76-77年シーズンの首都圏移転大会の再来かと思ったりしたw。しかし、当時同様に個人技でヒタヒタと攻め込む個人技で逆襲に転じた静学は、当時とは全く異なるセットプレイのうまさや時折高速化する変化から、山田を押し込み3-2と逆転。終盤、ロングスローの飛び道具を繰り出した山田の猛攻をかわし、初の単独全国制覇に成功した。個人技に長けた選手を多数披露した上記決勝で敗れて以来43年、遂に井田前監督の執念が実ったのは感動的だった。
 ちなみに準決勝の静岡学園対矢板中央戦も忘れ難い。静学の変幻自在の攻撃を、矢板が組織守備で止める。終了間際、変化あるパスワークから、エースの松村優太が抜け出しPKを奪って勝ち切った。正に、井田勝通対古沼貞雄と言う戦いだった(元帝京高監督古沼氏は、矢板ベンチに入り指導を重ねていたとのこと)。昭和世代の老人には堪えられない一戦だった。

9位 五輪代表メンバ不明問題
 残念ながら疫病の影響で東京五倫は中止された。失礼延期された。21年東京五倫が開催されるかどうかは私にはわからないが。ただ、サッカー五輪代表の準備が、まったくうまく進んでいかなかったことを、ご記憶だろうか。
 19年11月に広島で行われたコロンビア戦。堂安と久保をはじめ欧州クラブの選手を冨安以外ほとんど呼んだ試合で完敗。さらに1月にタイで行われたU23選手権では、グループリーグでいきなり2連敗してトーナメント出場失敗。それも、選手に戦う気持ちが見られない残念な試合振りだった。
 予選がなく、多くの選手がJで実績を残す前に欧州に出て行ってしまうという未曾有の状況ではある。また、森保氏も、A代表監督兼任で多忙を極めているのも厳しいところだ。しかし、過程はどうあれ本大会半年前になっても、ここまでチーム作りがほとんど進んでいなかったのは残念だった。
 ただし、森保氏にとって五輪の延期は幸運だったかもしれない。ユース世代と大人の強化が分離しがちの日本サッカー界は、どうしても20歳前後の選手の成長には時間がかかる。この1シーズン、田中碧、三苫、上田らを筆頭に多くの選手が、Jでも定位置をつかむのみならず、中心選手として経験を積んだ。冨安は日本サッカー史上最高の選手への道を着々と歩んでいる。欧州に出た選手も出場機会を増やしている。手段をあやまたなければ、よいチームが作れる材料は十二分にそろっている。

10位 よく理解できないWEリーグ構想
 女子のプロサッカーリーグ構想が発表された。しかし、理解に苦しむことが多い。
 そもそも、女子サッカーの集客にとって最大の競合は男子サッカーがあり、観客動員が容易でないのは言うまでもない。女子サッカーの最強国のUSAでは、独自の観客動員に成功しているとの報道もみかけたこともあるが、それらの工夫を織り込んだリーグ戦運営が準備されているという情報は聞いたことがない。どのような方策でプロフェッショナリズムを導入した収入を得ようとするのだろうか。
 また、秋から春にかけて試合をすると言うが正気だろうか。真冬の厳寒期の観戦が相当な障害になることは、既に議論され尽くされているのだが。
 もう1点気になっていることがある。女子日本代表の試合振りから、過去の颯爽とした情熱をあまり感じられなくなっていることだ。世界一となった前後約10年間、女子代表の戦いぶりからは、常に心揺さぶられる「何か」を感じることができた。具体的に言えば、勝利を渇望した知性の発揮とでも言おうか。しかし、19年のワールドカップは、五輪向けに無理な若手起用を行ったためか、そのような「何か」を感じることができなかった。今日の女子代表の礎を築いた立役者である高倉麻子監督への厳しい批判は、つらいものがあるのだが。今の女子代表が、急ごしらえのプロリーグの支えとなれるだろうか。一方で、先日の皇后杯決勝のベレーザ対浦和や準々決勝のベガルタ対セレッソのような、技巧的、知的、情熱的な試合を見ることができるのだから、心配はいらないのかもしれないけれど。
 余談ながら。そもそも女子サッカーを男子と同じレギュレーションでやることにも疑問がある。筋力の関係でゴールキーパーの高さや、角度のあるキックの強さ、キック前のバックスイングの必要性など、男子との肉体能力の差はいかんともしがたい。ゴールの大きさ(特に高さ)や、人数や、ピッチの広さを工夫すれば、娯楽としてはもちろん、プレイする人々のおもしろさは一層広がるように思うのだが。もう、ここまで男子と同じレギュレーションが定着してしまった今となっては、もうどうしようもないのかもしれないが、

番外 中村憲剛と佐藤寿人引退
 別に作文します。
 1つだけ。この2人は、Jリーグでの輝かしい実績の割に、日本代表ではその実力をフルに発揮する機会を得られなかった。2人のプレイを存分に堪能することはできたが、それがちょっと悔しい。